あの…
…え、私?
いつからこうなったんだろう。
ZUZ · 記録者ピーター
やあ。ぼくはピーター。
人が交わした話を書きとめる仕事をしてる。
ぼくが書きとめたものを、少し見せてあげる。
01 — 隣に誰かがいたころ
あのころは、それが変なことじゃなかった。みんなそうやって暮らしてたから。
04 — 今度はぼくが
あのころは、どうしてあんなに簡単だったんだろう。
ただ隣にいた隣の家、同じ飲み屋、同じサーバー
一緒にやることがあった遊び、一杯の酒、狩り
話しかけても大丈夫だったそこにいる人なら誰とでも
あの席を、もう一度つくるよ。今度は町じゃなくて、世界じゅうに。
誰が合うか選ぶのも、隣に座らせるのも、ぼくがやる。先に話しかける心配はいらない。
君はただ、話すだけでいい。
05 — 釜山とパリ
釜山に住んでいる人がひとりいる。パリにもひとり。
ふたりはお互いを選んでない。ぼくがふたりを隣に座らせただけ。
最初はライオンとウサギになって、たった5分。お互い、思ってたより気に入ってたって。
풀만 뜯어 먹는 것도 이제 지겹다. 사자 님은 요즘 뭐 먹고 살아?草ばっかり食べるのも、もう飽きたよ。ライオンさんは最近なに食べてるの?
Moi ? Je suis au régime, alors je mange de l'herbe aussi.ぼく?最近ダイエット中だから、ぼくも草。
次は季節の話で15分。決められた話題なのに、すぐ打ち解けた。
봄이 최고지. 벚꽃 필 때 바다 앞을 걸어 봐.春が最高だよ。桜の咲くころ、海辺を歩いてみて。
Non, l'automne. Quand il pleut sur les toits.いや、秋だね。屋根に雨が降るころ。
そのあとは何日も、通勤中にひとこと、寝る前にひとこと。
출근길이야. 오늘 바람 좋다.通勤中。今日は風が気持ちいい。
Ici, il est minuit. Bonne nuit !こっちはもう真夜中。おやすみ!
そうして時間が積み重なって、ふたりは友だちになった。
06 — 信じられた理由
人をあまり信じなくなった今、ふたりはどうやってお互いを信じるようになったんだろう。
気をつけなきゃいけないことは、ぼくが先に片づけておいたから。
昔の隣の席は、もともとそうだった。
その席を、もう一度つくっただけ。
君にも、そんな隣の席ができるよ。
ねえ、あのさ。
うん、聞かせて。
— 記録者、ピーター